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2020年04月03日
【煮込む週末】第2回:牛テールシチュー
連載「煮込む週末」では、この世の肉という肉を片っ端から煮込んでいきます。今回の肉は「牛テール」。赤ワインで15時間煮込み、最終的にシチューにしました。
お肉天国ハナマサ
先日、「肉のハナマサ」を訪れた。“肉の”というだけあって、牛、豚、鶏の各部位、さらには馬、鯨など、多種多様な肉が陳列されていた。肉のダイバーシティだ。
5kgの肉塊なんてのもあった。ちょっとした買い出しから「仕入れ」まで、幅広いミートニーズをカバーする頼もしさがハナマサの魅力である。
特に胸が躍ったのは冷凍コーナーだ。
「鶏ガラ」「鶏もみじ」「豚背骨」などの、スープの材料。
「レバー」「ハツ」「ハチノス」などの、ホルモン系。
近所のスーパーには流通しない、業務用ばっちこいの品揃え。
ラーメン屋と焼肉屋の仕入れは、ほぼここで完結するだろう。
牛テールを赤ワインで煮込む
さて、そんなハナマサで「牛テール」を買ってきた。
今回は、牛テールを赤ワインで煮込んでいこうと思う。
牛テールを
赤ワインで
煮込む
そんなオーシャンズみたいなかっこいい週末が、自分の人生に訪れるとは思ってもみなかった。
※オーシャンズ(OCEANS)……かっこいい40歳前後が読むファッション&ライフスタイルマガジン
まず、冷水に牛テールを30分ほどつけて血抜きをする。
次に表面を強火で焼く。煮込む前に「焼き」をはさむことにより、メイラード反応が起こる。メイラード反応が何なのかはよく知らない。詳しく知りたい人は料理専門サイトを参照してほしい。
でも意味なんて分からなくたっていい。
おれは今メイラード反応を起こしているぞ!という気持ちが大切である。
さて、いよいよ煮込みに入る。
少しもったいないが、結婚記念日に母が贈ってくれた(が、飲みきれなかった)ワインを使ってしまおう。じつは私たち夫婦があまりワインを飲めないことを、いつか母には言わねばなるまい。
玉ねぎ、セロリ、ニンジンのみじん切りを炒めた鍋にワインをドボドボ注ぎ、ブイヨンも加える。煮立ったところで牛テールを投入。ワインが減ったら、都度足していく。
なお、別の鍋では塩味の牛テールスープも仕込んでいる。ねぎしで定食についてくるあのスープである。牛の尾と野菜を煮込むだけでうまいスープになるなんて、料理ってすごいよね。
ともあれ、仕込みは完了。時を進めよう。
6時間煮込んだところで夕飯時になった。いったん、この段階のものを食べてみよう。
「和」代表の牛テールスープ。味付けは塩コショウのみ。
「洋」代表、牛テールの赤ワイン煮。別の鍋で煮汁(煮ワイン?)、バター、ウスターソースなどを煮詰めたソースをからめた。見た目だけは俺のイタリアンである。
微妙だったので、さらに煮込む
結論から言うと、牛テールスープはまあまあ美味しく、赤ワイン煮は微妙だった。前者は肉のほぐれもよく脂身もやわらかくなっていたが、後者は噛み切るのに難儀した。いっちょまえな雰囲気を醸し出していただけに落胆も大きい。
いや、まだ負けと決まったわけじゃない。ここから、さらに数時間の煮込みを加えていく。(実際、驚くほどうまくなります)
就寝中は心配なのでIHを止め、ひと晩寝かせてから再度煮込みに入る。
追加で買ってきた2本目のワインも空になった。この時点で、合計15時間だ。
ここでドミグラスソースを加え、こっそりシチューへ方向転換する。赤ワイン煮は、僕には大人味すぎた。やっぱりオーシャンズにはなれなかった。
煮込み料理のいいところは、経過が微妙でもわりと取り返しがつくことだ。とりあえず煮込んでみて、あとから方針を決めたっていい。
知人の料理家は、どんな失敗料理も最終的にカレーにしてしまえばなんとかなると言っていた。暴論のようだが真理だと思う。人生にもカレーのような切り札があるといいのにな。
肉の感じが明らかに変わった。おたまですくうと、骨からするっと肉が外れるほどやわらかくなっている。脂身もほとんど溶けてしまった。
ワインベースで酸味のある大人味のシチュー。肉がホロホロで、これはうまい。とんでもないうまさと言ってもいい。
改めて、煮込みの力を思い知る。
時間をかけたぶん、しっかり結果が伴うのだ。
「継続は力なり」を、こんなに手軽に経験できることは他にあまりないと思う。
次は何を煮込もうか。
今回の「やりたいこと」にかかった金額
牛テール(1.2kg) | 2597円 |
---|---|
玉ねぎ | 58円 |
セロリ | 99円 |
ニンジン | 78円 |
じゃがいも | 49円 |
デミグラスソース缶 | 238円 |
3119円 |