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2020年06月23日
ミュージシャンの「いま」を知りたい〜Vol.3 ライブハウス”ALWAYS”
「ミュージシャンの『いま』を知りたい」3回目は少し趣向を変えて、ライブハウスの方にお話を伺います。
緊急事態宣言解除後も営業自粛を余儀なくされ、その窮状が伝えられることも多かったライブハウス。現在は少しずつ再開し始めていますが、未だ制限は多く、厳しい状況が続いているようです。そんな中、関係者は何を思っているのでしょうか?
今回お話を伺ったのは、関西でライブハウス"ALWAYS"グループを経営されている岡田直也(おかだ なおや)さん。激動だったという、ここ何ヶ月かの様子についてお話しいただきました。
ライブハウス"ALWAYS"とは
今回はご協力ありがとうございます。ALWAYSには、学生時代からとてもお世話になっています。他のライブハウスにありがちな「高いチケットノルマ」がなく、とてもライブがしやすい環境なので今も助かっています。
こちらこそ、いつもありがとうございます。間口を広く、気軽にライブをやれるようにとの考えでやっています。
梅田ALWAYSにて、わたしのバンドもお世話になった。
そういえば、そもそも岡田さんの素性を全く知らないのですが(笑)
高校卒業後、何をするでもなくふらふらとしていました(笑)。で、22歳のころ「そろそろなにかしなきゃいけないな」と思い、店舗の経営をしてみようと思いました。親も店をやっていたので、その影響もありますね。幸い、そのタイミングでライブ・バーの経営者を探しているという方に出会えたので、そこをそのまま"伊丹ALWAYS"として引継ぎました。2007年2月のことです。
伊丹ALWAYS! 何度もお世話になりました。
その後、同じように次の経営者を探している店舗に運良く出会い、2012年にはALWAYS梅田店、2016年にはALWAYS神戸店、そして同じ年に梅田店の近くでリハーサル・スタジオの経営も始めました。
順風満帆ですね。次々と店舗を引き継いで、タイミングにも恵まれていたんですかね?
というか、ライブハウス自体が斜陽産業なんですよね……。経営がうまくいっているのは一部のみで、少しでも都心から離れると、なかなか儲けにならないところが多いと聞きます。また、創業時から経営者が変わると、オープンした時ほどの情熱がなく、もうやってられない……ということで、廃業にする場合も多いようです。
そんな中でも、ALWAYSは平日・土日問わずいつも盛況ですよね。
おかげさまでどの店舗も月30本前後ライブを開催しており、毎晩沢山のお客様がご来店いただき、盛り上がっておりました。
「ライブハウス」というとロック・ミュージックの印象が強いですが、ALWAYSはジャズの演奏も気軽に聴けますし、自分でもステージに立てるので、我々にとってもありがたい存在です。
「コロナ禍」のライブハウス
「コロナ禍」で大変な影響を被ったと思います。特に2月や3月は「ライブハウスがクラスター源に」との報道で、世間からの風当たりがかなり厳しくなったのではないでしょうか。
おっしゃる通りで、ライブイベントがコロナの影響により激減し、人件費や家賃など、固定費の支払いが厳しい状況です。具体的な話をすると、1ヶ月に250万円ぐらいは固定費がかかります。ありがたいことに、クラウドファンディングで160万円、寄付で130万円ほど集まったのですが、それも固定費で消えてしまいますね。
額だけ聞くとかなり集まったように聞こえますが、確かにそれだと数ヶ月しかもちませんね……。
そうなんです。また、11月までの土日はすべて予約でいっぱいだったのですが、それもほとんどキャンセルになってしまいました。
わたしも8月にALWAYSでライブする予定でしたが、中止になってしまいました。当日までには期間があっても、リハーサルができるような社会情勢になっているかが怪しい、というのが最大の理由です。とりわけ、オーケストラだと関わってくる人数も多いので……。
最初に報道があったとき、どうされましたか。
実は「京橋アーク」が最初にニュースになった後、ALWAYSへの問い合わせも急激に増えたんです。なので、梅田店付近のライブハウス「ソープオペラクラシック」の知り合いに相談に行きました。「これからどうしましょう?」って。そうしたら、その直後にソープオペラでも感染者が出た、と報道されたんです。
とても驚きましたが、京橋アークもソープオペラも「感染拡大を防ぐため」ということで店名を自ら公表されていました。勇気ある判断だったと思います。
本当にそうですね。でも、それが「ライブハウス叩き」をする人を生み出したかと思うと、なんともやりきれませんね。むずむずします。
コロナ後のライブハウス
これを機に新しく取り組まれたことはありますか。
さすがになにもしないという訳にはいかないので、「投げ銭」での無観客ライブ配信などに取り組んでいます。同じように仕事をなくしたミュージシャンの方々に協力してもらい、安全に注意しながらやっています。3〜5月にライブ配信を頑張ってやっていたおかげで、今もミュージシャンの方々から連絡をたくさんいただいています。ありがたいことです。
「無観客ライブを開催した場合、営業補償は一切しない」みたいなひどい話もありましたよね。結局撤回されたようですが。
「自粛は求めるけど補償はないだろうな」というのは、なんとなく分かっていました。そういった面では最初から期待していなかったので(笑)、いろいろ考えて早めに対応していました。ニューヨークはライブハウスに家賃保証が出てるという話もありますので、やはりこういう時に世間の理解の薄さを感じますね。
ライブに関しても、予約が入っていたものに関しては細心の注意を払って実施するつもりでした。でも、やはり出演者さんの希望を聞かない訳にはいかないので、キャンセルになっていきましたね。
その他にも考えられたことはありますか。
現在、ライブハウスを3つ、リハーサルスタジオを1つ経営しているんですが、事業形態として偏りがあったことを痛感しています。こういった時に身動きがとれなくならないよう、他の事業展開など、リスク分散を考えておくべきでしたね。音楽ができる場を続けていくためにも。
こうやって改めてお話をお聞きすると、岡田さんの音楽に対する強い情熱を感じます。
いや、わたし自身はギターが少し弾けるぐらいなんですけどね(笑)。こんなことはありましたが、今後も続けていこうとは考えています。難しい判断ですが……。
とりあえずは、この先何ヶ月かの様子を見て考えようかと思っています。今回のことで、これからの生き方を考えさせられていますよ。
あと、実は4月に第一子が産まれまして……!
わ! それはおめでとうございます! それはそれは激動の数ヶ月でしたね……!
奥さんが実家に帰っての出産だったので、ちょうど大変な時にひとりでした(笑)。今は家族3人、楽しく過ごしています。改めて、仕事を頑張ろうと燃えています。
お金やプライベートのことなど、赤裸々な話をありがとうございました。最後に、読者の皆さまにメッセージをお願いします。
6月から少しずつ、観客ありのライブをやっています。細心の注意を払って実施していますので、無理のない範囲でぜひお越しください!
またALWAYSで演奏できる日を楽しみにしています!
おわりに
やはり土壌が弱ってきている。この連載も3回目だが、共通してなんとなくそんなことを感じた。いくら緊急事態宣言が解除されたとは言え、少なくとも「堂々と」ライブができるような情勢とはとても言えない。
それでも土壌を枯らさないために、こういったライブハウスの方のような「雪かき仕事(@村上春樹)」を一生懸命してくださっている方がいる。もしよろしければ、これを機に少しでもそんな人たちのことを念頭に置いてもらえると嬉しい。
「ミュージシャンの『いま』を知りたい」、いよいよ次が最終回です。最後は、わたしの「師匠」にお話を伺います! お楽しみに。
<過去の連載記事はこちら>
#01:国府弘子さん https://www.yajirobe.jp/hirokokokubu/
#02:三井大生さん https://www.yajirobe.jp/daiseimii/