最新の記事
隔週月曜更新です
2020年07月21日
弟とドライブしたい
弟とドライブがしたい。
近くに住んでいることもあり、もともと月に1度は会う仲だ。
ただ、どうも聞くところによると、最近やたらとかっこいい車を手に入れたそうだ。
おおい。お兄ちゃんを乗せておくれよ。
※2020年3月初旬に取材したものです。
なお、今回のドライブ・ルートはこうだ。
まさかの4デイズ。気分はフェスである。
(余談だが、知人に聞いた話だと、マッチングアプリで女性が「趣味」として挙げているもののほとんどが「フェス」と「カフェ巡り」らしい。ほんとうに余談ですまない。)
まずは弟と合流
という訳で、まずやって来たのは神戸市北区・鈴蘭台。
ここまで来れば、弟が車に乗っけてくれるという。
わたしは京都に住んでいるので、すでに遠い。1時間半もかかってしまった。もうこの時点でちょっとした旅である。
弟は、あまり変わっていなかった。
当たり前だ。その2週間前に会ったばかりなのだから。
普段よく会っている人ランキングで言うと、
1. 妻
2. オーケストラのメンバー
3. 弟
ぐらいだろうか。2位に入り込むオーケストラのメンバーもなかなかだな。
肝心の車が、なかなかかっこいい。
どこかに駐車する度に弟は「えーこの車かっこいい!誰の?俺の!!!」というくだりをやっていた。10回ぐらいやってたんじゃないかな。よく飽きないものだ。
そして、ここが一番重要なのだが、弟はやたらと運転が上手い。
以前に別の車を持っていた時も、実家に帰るタイミングに合わせて、ちょこちょこ乗せてもらっていた。バスや列車で帰るよりはるかに心地よく、しかも格安で、なによりも最高の雑談相手つきだ。
弟と鳥取を巡ろう
われわれの地元は、鳥取県の鳥取市である。
日本地図で言う「右側」の「砂丘がある」「島根じゃない方」である。
もうこういった説明も手垢がつきすぎて食傷気味である。
こんなに弟と地元でゆっくりできることはそうないので、せっかくなのでいろいろ喋りながら、行きたいところを周ってみた。
ちよ志
一発目から「うどん」で申し訳ない。全く観光地でもなんでもないし。
ただ、鳥取の人に「ちよ志」の話をすると「ほほう、玄人さんですな」となるのだ。
それぐらい、われわれには馴染みの深いうどん店である。わたしも高校生のとき、よくお世話になった。
店のテイッシュ箱には「ミシン目を指でなぞらないでください」の注意書き。 「ここまで書くようになれば日本も終わりだ」と弟。
いい洞察力を身につけたな。お兄ちゃんは嬉しいよ。
べに屋
二日目。せっかく鳥取なので、今度は「カレー」を食べに来た。
この店はふつうのカツカレーよりチキンカツカレーの方が有名だよ、とわざと注文後に言ってみた。
「え!?まあ別にいいし」
一瞬だけ悔しそうな顔をしたのをお兄ちゃんは見逃さなかったゾ。何年の付き合いだと思っているんだ。
肝心のカレーは、なにをどう混ぜたらこの味になるか、考えただけでも脳がキャパオーバーしてしまう、そんなコク深い美味しさだ。鳥取駅からも近いので、ぜひ行ってみてほしい。
わらべ館
ひとつお断りをしなくてはならない。
ドライブの記事なのに、先ほどから出てくる場所は、すべておおよそ3km圏内におさまってしまうのだ。
しかし、ここが人口の少ない鳥取らしいところで、つまりは車がないとどこにも行けないのだ。田舎、もしくは自動車工業地域のあるあるネタだろう(豊田市の友人も同じことを言っていた)。
そしてここ「わらべ館」、知る人ぞ知るどころか知る人も知らない、けっこうな穴場である。
鳥取砂丘が「通天閣」だとすると、わらべ館は「スマートボール場」といったところか。むむ、場所を場所で例えたせいで非常にわかりにくい。
「わらべ館」とは、簡単に言えば「おもちゃの体験型博物館」である。
一聴するとチープに響くかもしれない。
しかし、20代中盤の男2人で訪れても存分に楽しかった、ということは声を大にしてお伝えしたい。
どうだろうか。見れば見るほど楽しくなってこないだろうか。
ただ、新型コロナウイルスの影響で、いろいろと展示にも制限がかかっていたのが心残りであった。
とまあ、こんな感じで自由気ままに地元を巡った。
夜は温泉に入ったり、地元の海産物を食べたりと、ここには書き切れないほど鳥取を味わった。
そして実家では空いた時間、ひたすら楽器を触っていた。弟の好きなミスター・チルドレンなんかも弾いた。「終わりなき旅」って、一曲中に9回も転調するのね。
実はちょっとしたミッションが
ここでひとつ、(勇気ある)余談を挟ませていただきたい。
今回わたしは、ただただ実家に帰ったのではない。ちょっとしたミッションがあった。
実は、色々あって(ほんとうに話せば長くなる)2020年度から「職場内転職」をすることになった。一旦退職願を出したのち、勤務形態を変えて再雇用してもらうのだ。
こんなこと、読者のみなさまからすると他愛もないことかもしれない。
しかし気の小さいわたしは、どのタイミングで両親にそれを伝えるか、ビクビクしていた。なんてったって、新卒で勤めていたところを形式上とはいえ一旦退職するのだ。雇用形態を変えるのは、どこぞの弟のように車をホイと変えるのとは訳が違う。
そのタイミングは、突然用意された。
帰省初日の夜。お酒も少し回った中、仕事の話になった。少し前からからわたしが「上手に」働けていないことを両親も知っていたので、一瞬緊張が走った。ああ、きてしまった、さあ、どう切り出そう……。せっかく回ってきたお酒がスッとひいてしまったぞ。
そんなグルグルしている頭の中、すかさず弟。
「ま、いろいろあるけど、どんな形であれ今の職場には居れるんでしょ?」
な、なんというキラーパス。さすが弟、ずっとサッカーをしてるだけある。
そこからは綺麗にパスが繋がる。最終的に「あなたは向いてるから、どんな形であれ続ければいいんじゃない」という両親の温かい言葉を引き出した。ゴ、ゴール。ひょえー。
……とまあ、初日に(弟が)ゴールを決めたおかげで、その後はおもしろおかしく取材を続けることができた。 (そして今現在は、自分でもびっくりするぐらい「上手に」働けています)
本題に戻ろう。 帰省もあっという間に終わり、残る目的はラーメン。帰りの道中にずっと行きたかったお店があるのだ。
その前に、お土産も忘れずに。
いよいよラーメンへ
さあ、ラーメンだ。
ここで少し、今回のラーメンの「プレミアム感」を紹介させてほしい。
「人類みな麺類」というラーメン店をご存知だろうか。関西に住んでいる人は聞いたことがあると思うが、強烈に美味しいのだ。
しかし、どの系列店にも、常に言葉を失うほどの行列ができている。並びたくない。けど、ラーメンは食べたい。
そんな中知った。なんと、兵庫は三木のサービスエリア内に、その系列店があるという。
これはチャンスだ。今回、弟に車を出してもらったついでに、食べに行くことにしよう。
さて、お待ちかねの三木PA。
そして待ち構える「世界一忙しいラーメン屋」
ド平日でしかもPAの中ということもあり、当初の思惑どおり並ばずにすんだ。
さあ、お待ちかねのラーメンだ。
う、うまい。
麺もスープもさっぱりしているのに、なぜこんなにも満足感が高いのだろう。
弟もとても満足していた。でも食後に「甘いモンが食べたい」とぶうぶう言っていた。この甘党が。こういうところは昔から変わらんな。
弟とドライブして
4日間におよぶ、弟とのドライブ。気づけば、何か食べてばかりだった。
しかしまあ「食事」というのは、ある程度気のおけない仲でないと、そう何度も一緒に行くようなものでもないだろう(内田樹先生も似たようなことをおっしゃっていたな)。
うちの兄弟はよく周りから「仲がいい」とは言われてきたが、わたしとしては「そうかなあ」という感じだった。 けど、今回のドライブを通して、確かにそんな気がしてきた。気のおけない相手には「キラーパス」など出せないし、ましてやこちらも受けとれないのだ。
美味しいものを食べて、地元を満喫して、いろいろ気持ちもスッキリした。
「育ってきた環境がほぼ同じ幼なじみ」というのは、かなり頼りになりますね。
ありがとう、弟よ。
しかし、最後にひとつだけ教えてほしい。
弟よ。
なぜ、2020年に入ってから、わたしを「呼び捨て」で呼ぶようになったのか。