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2019年12月02日

秩父の雲海を見たい

秩父の雲海を見たい。
埼玉県の秩父市が、雲海で盛り上がっているらしいという話は聞いていた。西武鉄道が2015年から始めた雲海ツアーには、累計5000人以上が参加しているという。

山に登る人であれば、おそらく雲海は見慣れているだろう。しかし、僕ら東京のもやしっ子にとっては縁遠いものだ。怠惰ゆえ、「都心から一番近い雲海スポット」という、いかにもお手軽そうなキャッチコピーに、つい惹かれてしまう。

11月の土日を使い、早朝の秩父を訪ねた。

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榎並紀行

NORIYUKI ENAMI

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1980年生まれ。ライター、編集者。編集プロダクション「やじろべえ」代表。アメリカで生まれたりしましたが英語は話せません。ぽっちゃりしています。

今回は「おれも雲海を見たいぞ!」という強い希望により、部下の小野くんも同行する。

 

 

小野君は、なぜか白菜を持っていた。同行者のかさばる荷物に不安を抱きつつ、さっそく秩父へ向かう。東京都心から秩父までは、車で2時間ほどだ。

 

なお、秩父の雲海が発生しやすいのは春と秋。特に11月が最大のチャンスだという。 しかし、我々が出発したのは11月30日の午後で、雲海の発生が見込めるのは翌日12月1日の明け方から早朝にかけて。そう、すでに1日遅れで「最大のチャンス」を逸してしまっていることになる。惜しい!

 

まあでも、12月1日はギリ11月みたいなものだろう。

 

チャンスは未明から日の出前後まで

秩父には雲海スポットがいくつかある。今回はそのうち「秩父ミューズパーク」と「三峯神社」の2か所で雲海観賞を試みる。

 

まず、1日の未明(0時~3時頃)に秩父市街に近い「秩父ミューズパーク」へ行き、その後、奥秩父の「三峯神社」で明け方から日の出前後(5時~7時30分頃)の雲海を狙う行程だ。特に日の出前後に発生しやすいそうなので、本命は三峯神社のほうである。

 

 

というわけで、秩父に着いた。 秩父市街を見守るように鎮座するシンボル・武甲山のかっこよさにしびれる。

 

 

紹介が遅れたが、今回は僕らに加え、フォトグラファーの松倉広治さんにご同行いただいている。僕らのへぼい写真の腕では、せっかくの雲海の美しさを伝えきれないだろうという冷静かつ後ろ向きな判断だ。

 

「顔出しはカンベンしてよ~」と松倉さん。照れ屋だが腕は確か。この道25年のベテランである。(※写真下に撮影者の表記がないものは、すべて僕らのへぼい写真です)

 

 

まずはロケハンがてら、秩父ミューズパークの雲海スポットである展望台に行ってみよう。

 

 

展望台へ到着すると、ちょうど日が落ち秩父市街の灯りが点るタイミングだった。雲海がなくてもすでにロマンチックだが、この美しい夜景が幻想的な雲で覆われるかと思うと、今からぞくぞくする。単に薄着で寒いだけという気もする

 

(撮影:松倉広治)

 

 

西武秩父駅前の「祭の湯」で仮眠

時刻は19時30分。未明までまだ数時間あるため、我々はいったん秩父ミューズパークを離れ休憩・仮眠をとることにした。

 

 

やってきたのは、西武秩父駅併設の温泉施設「祭の湯」。雲海とは別に、前々から来てみたかった。

 

秩父の「祭」をコンセプトにした複合型温泉施設で、金・土曜、祝前日&特定日は宿泊も可能。20時~翌2時という中途半端な時間に仮眠をとりたい我々には、もってこいである。

 

 

温泉エリアには武甲山を望む露天風呂や寝転び湯、シルク湯、ジェットバスなど多彩なお風呂があって楽しい。

さらに、広いサウナと清潔な水風呂、休憩用のイスもある。サウナ室は90℃でオートロウリュ付き、水風呂16℃という好みの仕様・設定だった。

 

 

温泉エリア内にはレストランもある。もりそばとミニわらじかつ丼セット1230円を注文。

 

ミニだからと侮っていた「わらじカツ」が思いのほか大きく、うっかりお腹いっぱいになってしまった。温泉後の満腹ときたら、次にやってくるのは睡魔である。これ、仮眠どころかぐっすり寝てしまうな。

 

 

休憩スペースのリクライナーはフルフラットにできるタイプ。飛行機ならビジネスクラスだ。しかし、フルフラットにすると絶対に起きられないので、あえてエコノミースタイルで眠りが深くならないようにした。

 

湿度高く、風弱め 条件はよさそう

数時間後。腰の痛みと引き換えに、なんとか午前2時に目を覚ますことができた。

 

 

深夜になって一気に冷え込み、車に霜が降りている。

 

気象庁の速報によると、午前3時の秩父の気温は-1.0℃、降水量0.0mm、風速0.3m/s、湿度98%。雲海は湿度が高く、風が少ない時に発生しやすいということなので、条件は悪くない。

 

また、秩父の雲海予報Twitter(という便利なものがある)によれば、本日の雲海発生確率は43%とのこと。ここ10日ほどでは2番目に高い確率だ。

 

期待を胸に、再び秩父ミューズパーク展望台近くの駐車場へ。

すると、頭上には満点の星が瞬いていた。

 

(撮影:松倉広治)

 

 

煌煌と輝くオリオン、シリウス、すばる……あと、なんか知らない星たち。駐車場の灯りが消えたことで、それまで闇夜に紛れていた星々までもがハッキリ視認できるようになった。

 

そういえば先日、長野の秋山郷でも美しい星空を見たことを思い出す(参照「温泉を掘って入りたい」)。あの記事で「こんなにも多くの星を眺めたのは人生で初めて」と書いたが、わりと早く2回目が来た。

 

 

展望台へ続く真っ暗な道を、スマホで足元を照らしながら歩くこと3分。 そこに広がっていた光景は……

 

(撮影:松倉広治)

 

 

雲海……出て………ない?

 

いやまて、橋のところになんかあるぞ。

 

(撮影:松倉広治)

 

左手前の橋の部分がモヤモヤと霞がかっている。雲海とまではいえないが、「うんモヤ」くらいの雰囲気は出ている。ちょっとにおいそうな表現をしてしまったが、とても美しい光景であった。

 

(撮影:松倉広治)

 

 

しかし数分後、うんモヤはすぐに散ってしまった。その儚さもまた、神秘的だったりする。

 

そして本命の三峯神社へ

続いて、日の出の雲海を拝むため、奥秩父の「三峯神社」へ向かう。

 

 

三峯神社は三峯山の山頂、標高1102mに鎮座している。秩父市街からは車で約1時間だ。すぐ近くの駐車場まで車で上がってこられるため、こちらも比較的アクセスしやすい雲海スポットといえる。

 

駐車場に着いたのは午前4時。周囲には、やはり雲海待ちと思われる車が十数台。

 

 

日の出は6時33分だが、6時前には空が白みはじめた。ここから7時30分頃までが、最大の雲海チャンスとなる。長丁場になるため、駐車場近くのトイレで用を足しておくといいだろう。ここまで来て、尿意で雲海に集中できないなんて悲しすぎるから。

 

 

なお、雲海の展望地は三峯神社境内の「奥宮遥拝殿(おくみやようはいでん)」にある。途中、奥宮参道入口という紛らわしい分岐があり、こっちに進むとそのまま本格的な登山ルートに突入してしまうためお間違えなく(僕らはしっかり間違えた)。

 

出るのか?雲海

と、多少のロスはあったものの、日の出前の6時に奥宮遥拝殿へ到着した。 どうだろう、出ているだろうか?雲海。

 

(撮影:松倉広治)

 

うん、雰囲気はある。日が昇って光が差し込めば、よりハッキリ雲海らしく見えるかもしれない。

 

(撮影:松倉広治)

 

 

そして30分後、日が昇った状態がこれだ。正直な感想を言おう。

 

「あんま出てねえな」

 

(撮影:松倉広治)

 

 

それから少し粘って、さらに1時間後。うん、やっぱり出てねえな。

 

山間にちらほらと若干の薄モヤはかかっているが、「雲海」と認定できるほどのものではない。やはり、うんモヤどまりだった。

 

 

ただ、薄目で見たらわりと雲海だった。そんなふうに自分を騙すことしかできなかった。

 

 

というわけでこの日、ちゃんとした雲海を拝むことはできず。残念だが自然が相手なので仕方ない。それに、見られるかどうか不確実なものだからこそ、こんなにもワクワクした気持ちになれたのだ。秩父よ、素晴らしい体験をありがとう。

 

と、キレイな話っぽくまとめてみたが、悔しいことは悔しい。 また来年、今度はちゃんと11月のうちに再訪したいと思う。

 

 

今回の「やりたいこと」にかかった金額

宿泊費(祭の湯) 4010円
もりそばとミニわらじかつ丼セット 1230円
交通費(ガソリン代・高速道路代など) 5000円
10240円