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2020年09月01日

金髪にしてコロナ禍の憂鬱を吹き飛ばしたい

まったく、新型コロナウイルスの奴め…。対面での取材や打ち合わせは徐々に増えてきたものの、元の生活様式に戻ったとは到底言えない。ステイホームで家にいることが多いため、オンライン麻雀の段位がぐんぐん上がってゆく。

家で缶チューハイを飲みながら、なんか、こうパーっと行きたいなあと思う。その時、閃いた。「金髪にしよう」。

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石原たきび

TAKIBI ISHIHARA

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1970年、岐阜県生まれ。塾講師、情報誌・書籍編集者を経てフリーランスに。お酒と焚き火をこよなく愛します。編著に『酔って記憶をなくします』(新潮社)など。

ほろ酔いで知り合いの美容師にLINEを送る

大学時代に自分でブリーチをして茶髪にしたことはあるが、本格的な金髪は未経験。今回は茶髪ではなく「金髪」というのがポイントだ。髪を光らせれば気分も晴れやかになるだろう。

 

ほろ酔いで知り合いの美容師にLINEを送った。「金髪にしたいんだけど、どう思う?」。返信は「髪を短くして金髪にしたら似合いそう」。よし、決まった。

 

 

そうなってくると、世の金髪の人々が気にかかる。

 

 

こちらは古着屋の若きオーナーで金髪歴は約半年。仕入先はおもにヨーロッパだ。

 

「一生に一度は金色にしたかったんです。この髪だと海外でも単なるアジア人を超えた存在として見てくれます。あ、デンマークではモデルにスカウトされました(笑)」

 

 

居酒屋で居合わせたお兄さんはカメラマン。美容室に行くのが面倒なので、自分でブリーチをしているそうだ。

 

「カメラマンとして独立した時期は黒髪でしたが、スタジオとかで『アシスタントさん?』って言われることがあって。金髪だと貫禄みたいなものが出るんですよね」

 

「彼氏が親に紹介してくれません」

 

シンガーの知人女性はこんなツイートをしていた。

 

 

「金髪は私にとって反抗の象徴」という彼女。いいことずくめのようだが、「金髪にして悪かったこと:金髪」とは?

 

 

「放っておくとすぐにスーパーサイヤ人みたいになるので、紫シャンプーを定期的にやらなきゃいけないんです。それが面倒だし、お金もかかる。あと、彼氏が親に紹介してくれません」

 

 

また、「デイリーポータルZ」編集長の林さんは独自の見解を呟いている。

 

 

「金髪にしてからしばらく経つんですが、今年は特に虫が入ってくる気がします。人があまり外出しなくなって、虫が我が物顔で飛んでいるからかもしれません」

 

 

街灯と間違えて飛び込む現象だろうか。

 

トータルで2時間半ぐらいかかるらしい

 

というわけで予約を入れた日がやってきた。いざ、荻窪の美容室「CARAJI南口店」へ。

 

 

「CARAJI」とは沖縄の方言で「髪」という意味だそうだ。ここ数年は1000円カットで髪を切っていた。久しぶりの美容室である。

 

 

最初に簡単な説明を受ける。

 

「ブリーチだけだと、どうしてもヤンキーみたいなオレンジ金髪になっちゃうから、ブリーチの後でもう一回カラーを入れますね。いわゆる『ダブルカラー』ってことで、そうするときれいな金色が出るはず」

 

全面的にお任せします。

 

 

まずはシャンプーから。じつはカットはこの店ですでに済ませている。おおよその進行スケジュールも見せてくれた。トータルで2時間半ぐらいかかるらしい。

 

 

美容室のシャンプーはのけぞるタイプ。

 

 

この姿勢も久しぶりだ。

 

ブリーチ剤が頭皮にビリビリと沁みた

 

「はい、ブリーチをしますね。ちょっと沁みるかも。人によって違いますが、頭皮のダメージやお酒の残り方とかで変わるみたい」

 

 

うわ、ビリビリと沁みる。沁みるというより冷たい。しかし、数分後には落ち着いてきた。これなら大丈夫だ。

 

「ブリーチ中はみんなこういうお地蔵さんスタイルに。丸坊主にしたら…というシミュレーションになりますね」

 

 

鏡の前には3冊の雑誌。お客さんを見てセレクトするそうだが、ちょっと僕の趣味とは違う。

 

「じゃあ、これは?」と持ってきてくれたのは『散歩の達人』。ドンピシャです。というか、この雑誌で仕事をしています。

 

 

他にiPadでもいろんな記事を読めるという。

 

工夫をすればブリーチ中も仕事ができる

 

しかし、2時間半はかなりの長丁場。ノートPCを持ってきているが、まさかこの状態で仕事もできてしまうのだろうか。結論から言うと、できた。

 

 

目の前の道を消防車が何台も通る。

 

「ここ、よく通るんですよ。こないだも『何かが燃えた』っていう通報が入ったらしくて。でも、嘘だったみたい。そういうのをボヤって言うんでしたっけ?」

 

いや、ボヤは燃えてしまっていると思うよ。

 

 

ゴールが近づいてきた。ヒーターのようなマシンでカラー中の髪を温める。

 

 

続いてシャンプーで溶剤を洗い流し、髪を乾かす。

 

テーマはイギリス風「ロイヤルオヤジ」

 

「完成しました! きれいな金色! 真っ金金にしないで、ちょっとくすませました。テーマ? うーん、色がイギリスっぽいから『ロイヤルオヤジ』にします」

 

 

そう言われると高貴な金色のように見えてきた。「ロイヤルオヤジ」、いいじゃないか。ここまで短くしたのもいつぶりだろうか。

 

 

大満足でお会計。最後はお見送りをしてくれた。

 

 

ビフォー・アフターはこうなりました。

 

 

母親と妹からの「率直な感想」とは?

 

その足で高円寺に向かい、行きつけの飲み屋で披露した。「似合いますね」と反応はすこぶるよい。「ファンキーになりましたね」とも言われた。

 

そして、感想を聞きたい女性があと2人いる。母親と妹だ。身内ならではの率直なコメントをくれそうだ。送ったのは下の写真。

 

 

まず、母親から返信あり。

 

 

後半はコロナの話に移行しているが、やはり田舎のオカアチャンにとっては黒髪がベストなのだろう。想定の範囲内だ。

 

続いて、妹。

 

 

「似合わない」と直球で来た。歳が近いので好意的な反応かとも思ったが甘かった。かなりのディスられようだが、妹よ、姿勢は関係ないだろう。そして、竹野内豊に似ていると言われたことは人生で一度もない。

 

 

気を取り直して店先でホッピーを飲んでいると、隣の居酒屋の看板娘(4歳)が遊びに来た。「あ、たきびさんだ」。

 

 

「どう? 似合う?」。ちょっと考えてから小さく「うん」。ありがとう。

 

まとめ

 

<金髪にしてよかったこと>

・周囲の反応を含め、かなりの気分転換になった

・ボサボサでも、なんとなくそれっぽいスタイリングに

・頭頂部の薄毛が目立ちづらくなった気がする

 

<金髪にして悪かったこと>

・根元から黒髪が伸びてくるのでケアが面倒くさそう

・仕事で通うビルの警備員に身分証明書の提示を求められた

・母親と妹からディスられた

 

あと、金髪にしてわかったのは「他人は他人の髪の色をそれほど気にしていない」ということ。自分にとっては“大事件”だが、まあそういうものだろう。いずれにせよ、後悔はしていない。