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2020年02月19日

日本刀の試し斬りをしたい

先日、練馬で日本刀をふるってきた。真剣でゴザをバッサと斬ってきた。

これからそのことを書くのだが、日本刀つながりで江戸時代について調べていたところ、倒幕からまだ150年くらいしか経っていないことに気づいた。知ってはいたけど改めて認識し驚いた。

ほんの1世紀半前まで、日本人はちょんまげをして腰に刀を差し、「ござる」とか言ってたのだ。

ござる!

それはともかく、日本刀はかっこいい。
というわけで、真剣の試し斬りをしてきましたでござる。

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榎並紀行

NORIYUKI ENAMI

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1980年生まれ。ライター、編集者。編集プロダクション「やじろべえ」代表。アメリカで生まれたりしましたが英語は話せません。ぽっちゃりしています。

 

 

脈絡のない書き出しになったが、以前から日本刀、それも真剣を手にしてみたいと思っていた。門をたたいたのは、東京・練馬にある「正柳館」だ。“総合武術道場”であるという。

 

 

軒下には白菜ともに防刃ベストが置かれていた。ここでは護身が今晩の食材くらい日常なのだ。

 

 

大事な看板は物置化していたが、この門構えに頓着しない感じが逆に達人っぽい。

 

 

おそるおそる道場内へ。さすが総合武術道場というだけあり、日本刀以外に槍やなぎなた、棒、杖、手裏剣など様々な武具が揃っている。写真右側に写る上田師範(正柳館グループ二代目総帥)はそれら全ての武を体得している上、モーニングスターというドラクエでしか聞いたことのない武器まで扱える。その上、かつてはPTA会長まで務めていたというオールマイティぶりだ。

 

 

そんな上田師範に今回習うのは剣術における基本中の基本、袈裟斬りである。正柳館では「初段」に分類されている。

 

 

なお、四段で「風車」、六段で「燕返し」を習得できる。このまま段位が進んだら九頭龍閃までいきそうだ。

 

 

真剣を扱う前に、まずは模擬刀で基本の動作を学ぶ。模擬刀といっても竹光ではなく刃がついていないだけの本物だ。そのため、ずっしり重い。いきなり刃がついた重い刀を持たされたらきっとびびってしまうだろうから、これで慣れさせてくれるのは有難い。

 

 

ちなみに、この日は私の他にカップルの体験者がいたのだが、この二人、筋がいいのである。さっきからビュンビュンとやたらいい音をさせている。振れども振れども進歩のない私を尻目に、めきめき上達していく。自分が明らかに劣等生である状況は、なかなか辛いものだ。才能あふれる若き男女に、才能なきおじさんという構図が、なお悲しい。

 

 

5分ほどの練習を経て、いよいよ真剣とご対面。黒光りする刃文。本物はやはり凄みが違う。なお、日本刀は「美術品」に分類され、届け出などの管轄は文部科学省になるという。へー。

 

面白いがあまり使いどころのなさそうな知識を得つつ、レッスンは進む。いよいよ真剣での試し斬りである。

 

 

撮影係の小野くんにも真剣を持たせてあげる。私より似合っていて悔しいので、すぐに返してもらった。

 

 

試し斬りに使うゴザは、水に一昼夜浸しやわらかくしてある。「触ってみてください。人肌みたいな感触でしょう」と師範。急に怖いこと言うな、この人。でも、この生々しい手触りよ……。

いよいよ試し斬る

さて、試し斬りである。こういうのは座禅や瞑想で精神集中をしてから臨むものなのかなと思っていたが、ポンと刀を手渡され「はい、じゃあ斬ってみましょう」と師範。

 

 

ここで急にびびってしまい「ち、ちなみに、この段階でやめちゃう人とかいます?」などと腰の引けたことを言う私に師範は「いないね」とバッサリ。剣だけでなく会話の切れ味も鋭い。

 

 

いないらしいので観念して構える。

 

上段でいったん静止し、呼吸を整え、一気に振り下ろす。

 

 

ぐにゃあ。

 

失敗。原因はおそらく、ゴザを横から叩いてしまっていること。斜めに美しく斬り下げるには、「釣り竿の要領で、刀を遠くへ放り投げるように振り出す」「後ろ足のあたりまで、しっかり振りぬく」が大事だという。だが、放り投げるように振ると刀がすっ飛んでいきそうだし、振りぬくと自分もろとも斬り捨ててしまいそうで怖い。

 

 

するっと始まってしまったこともあり、真剣を扱う覚悟が固まっていなかった。心・技・体のうち、技と体を結びつける「心」が足りていなかったのだ。まるで「技」と「体」は足りているみたいな言いぐさであるが。

 

気持ちをぐっと入れなおし、再度ゴザと対峙する。

放り投げるように~~

 

 

打つべし!

 

 

おお、斬り口!

ザシュっ!という手応えとともに、会心の一刀が決まる。

これは気持ちいいぞ!

 

 

何かに開眼したのか、その後はおもしろいようにズバズバ斬れるようになった。

 

 

「首の皮一枚残し」という高等技術もマスターした。首の皮一枚残しは切腹における介錯の作法らしく、「介錯人になれますよ」と師範におだてられた。どちらかといえば下手を打って介錯される側の人間だと思っていたが、とんだ職能があったもんである。

 

 

というわけで、袈裟斬りを習得した。試し斬りというから1~2回体験して終わりかと思ったら、ゴザが細切れになるまで何度も斬らせてくれる気前のいい道場だった。

 

ザシュっ!

今も手に残るあの快感。また味わいたいので正式に入門しようかな。

 

 

上田師範の逆袈裟斬り。かっこいい。

 

今回の「やりたいこと」にかかった金額

参加費 6000円
6000円