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2019年10月23日
山でコーヒーを飲みたい
山でコーヒーを飲みたい。
しんどい山行を経てたどり着いた頂。絶景を眼下におさめつつ飲むコーヒーの味わいは特別なものに違いない。それに、「山でコーヒーを飲む」というワイルドなレジャーを素直に経験してみたい思いもある。
5月某日、コーヒーセットを手に山へ向かった。
山男はコーヒーを好むイメージがある。僕は山男ではないが、山で飲むコーヒーのうまさはなんとなく想像できる。爽快感、達成感、癒し…。それら全てが凝縮された一杯は、きっと最高だろうなと思う。
実際、最高だった。
ゴールデンウィーク明けの平日というハイカーが少なそうなタイミングをねらい、山に行ってきた。そして、よく晴れた空のもと、山のてっぺんでコーヒーを飲んだ。うまかった、とても感動的な体験だった。
こんな優雅なひとときは、いつ以来か。人生の走馬灯を編集できるなら、ぜひ加えたいワンシーンだった。走馬灯がネスカフェのCMみたいになってしまうけど。
山コーヒーに至る道のり
というわけで、ここからは「山コーヒー」に至る道のり、長い一日の模様をレポートしよう。ターゲットは東京・奥多摩の「御岳山」。標高929メートル、登山口から山頂まで所要およそ1時間とビギナー向けの山だ。
登山口の最寄り駅は青梅線(東京アドベンチャーライン)の御嶽駅。
平日朝の御嶽駅は思いのほか賑わっている。シニアのハイカー、外国人観光客、遠足小学生が三大勢力で、僕くらいの年齢(38歳)のおじさんは見当たらない。
◆ ◆ ◆
御岳山の登山道入口まではバスが出ているが、駅前に設置されていた案内地図を見ると、わりと近そうである。駅から登山口まで「徒歩5~6分くらいの感じ」で描かれている。
だが、実際に歩くとその見積りの6~7倍はかかるので、登山前に体力を温存したい人は素直にバスに乗るのがいいと思う。
結局、御嶽駅から40分歩いて登山口の「滝本駅」に到着。
滝本駅からは御岳登山鉄道のケーブルカーが出ており、これに乗れば山頂近辺の御岳山駅まで6分で着く。登山の大部分をショートカットできるが、今回は自らの足で山頂を目指す。達成感、疲労感というスパイスが、山コーヒーをより美味しくしてくれるはずだ。
滝本駅とは逆側の登山道を歩く。なお、山頂までの道は舗装されていて歩きやすい。ただ、物資を運ぶ車がけっこう通るので、すれ違いに注意しよう。
では、レッツゴー!
登ったり休んだり、でっかい根っこに興奮しながら登ること30分。
「おおまがり」というポイントに着いた。
立札によれば、このあたりから勾配や坂道のカーブが緩やかになり、ラクに登れるらしい。
ちなみに、先を歩く人が後ろの人に「おおまがりに着いたヨ」と教えてあげると安堵するそうだヨ。
ともあれ、山頂まではもうちょいっぽい。あとひとふんばり。
登山口から1時間半くらいは歩いただろうか。やがて開かれた場所に出た。家がちらほら建っている。
家だ!
家がある!
ここは東京で最も高所にある御師(おし)集落。1600年頃から人々が暮らし始め、今も150人ほどの住人がいる。ここらの子供たちはケーブルカーに乗って麓の学校に通うそうだ。登校はまだしも、下校は最終便を逃したらえらいことになる。1時間以上登ってこないと家に帰れないのだ。
寄り道のリスクが高すぎる。しかし、「実家が山」っていうのはかっこいいな。
御師には宿坊や旅館も多い。
若女将の手作りクッキーが気になりつつ
山頂を目指してさらに登る。
ここへきて今日イチの急勾配という試練。
飲食店や土産物屋が並ぶ通りを抜けると
山頂に鎮座する武蔵御嶽神社に到着した。疲労で覇気がないが、じつはとても興奮している。
と思ったら、まだけっこう石段があったので休憩。ベンチがあると、つい怠けてしまう。
武蔵御嶽神社の幣殿・拝殿は、徳川5代将軍・綱吉の命により造営されたもの。この奥にある大口真神社付近が御岳山のてっぺん、標高929メートル地点だ。御岳駅から歩くこと3時間ちょっと、ようやく山頂へたどり着いた。
最高のコーヒースポットを探す
しかし、境内で飲食はできないので、近辺でよさげなコーヒースポットを探すことにした。できれば眺望の開けた場所がいい。
山頂付近をうろついていると、遠足小学生と思しき子どもたちの絶叫が聞こえてきた。
なんかヤッホーヤッホー言っている。
ヤッホーってことは、そこにいい景色があるということかもしれない。
というわけで、ヤッホーの発信源へ。すると…
あ!
おお!
そこにはテニスコート3面分くらいの広々としたスペースがあった。四方を山々に囲まれ、遠く市街を見渡す素晴らしいビューポイントだ。
憧れの山コーヒー
申し分のないロケーションである。ここでコーヒーを飲もう。
コーヒーセット一式。今回は豆から挽くためコーヒーミルも持参した。
山にちなんで、豆はブルーマウンテン。ちゃんと専門店で焙煎してもらったものだ。100g(約10杯分)で2700円とお高いが、せっかくなのでいい豆を持ってきた。
まず、コーヒーミルでガリガリ豆を挽く。
すばらしい香りだ。さすがブルマン。普段はインスタントコーヒーしか飲まないが、これが極上であることはすぐに分かった。
挽けた。
沸かした湯を注ぐ。繊細かつ大胆に。
というわけで、コーヒーができた。憧れの山コーヒーである。
これまでの道のりに思いを馳せつつ。
いただきます!
ああ……しみる。疲れた身体に、全身の細胞に、温かいコーヒーがしみわたっていくようだ。おいしいのはもちろん、気持ちいい味とでも言おうか。
これまで、世界一うまい液体はサウナ後のビールだと思っていたが、山コーヒーはそれを上回る味わい深さだった。
天気がイイネ~。
ネスカフェのCMごっこ。
素晴らしかった
かくして、山でコーヒーを飲むという「やりたいコト」は達せられた。それは想像以上に素晴らしい体験だった。
その後、御岳山の名所「ロックガーデン」に立ち寄り、
明るいうちにケーブルカーで下山。行きは2時間かかったのに、6分で滝本駅に到着。
そこから素直に御嶽駅行きのバスに乗ったら、駅まで10分で着いた。みんな、乗り物ってすごい便利だぞ!
◆ ◆ ◆
一連の道のりを動画でもどうぞ(※音が出ます)。
今回の「やりたいこと」にかかった金額
東京からの交通費 | 2200円 |
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帰りのロープウェイ代 | 700円 |
コーヒーセット一式 | 12000円 |
コーヒー豆(一杯分) | 700円 |
15600円 |