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2020年03月30日

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ロイヤルホストのステーキを食べたい

ロイヤルホストはファミリーレストランの中でも、高級感のある存在だ。実際にお値段もちょっと高い。

そんなロイヤルホストでステーキを食べてみたい。実は2年ほど前からそう思っていたのだけれども、なかなかふんぎりがつかなかった。

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Editor/Writer/Illustrator

斎藤充博

MITSUHIRO SAITOU

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1982年生まれ。指圧師、マンガ家、編集などの仕事をしている。著書に『いやしのツボ手帳』(永岡書店)、『ツボストレッチ』(日本文芸社)などあり。つらいことがあるとすぐに寝てしまう。

これがロイヤルホストのステーキだ

 

 

いきなりだが、これがロイヤルホストのステーキである。どーん。

 

解説しよう。ロイヤルホストの「アンガスサーロインステーキ」というメニューである。お値段2,530円(税抜)。

 

 

「アンガス」とは牛の種類である。アメリカでは幅広く使われており、柔らかい肉質が特徴であるという。「サーロイン」とは牛の腰あたりの肉のことである。赤身肉の中に適度に脂が入っており、非常に人気が高い。「ステーキ」とは厚切りにした肉を焼いた料理のことである。

 

ロイヤルホストではステーキ肉をチルド管理している(冷凍していない)。これを注文のたびに店舗で手切りしているのだ。ステーキ皿はロイヤルホストオリジナルの美濃焼だという。

 

 

する必要のない解説だろうか? そんなことはない。十分に理解してから食べないと、もったいないだろう。

 

 

うまい。口の中にあふれるステーキの味。ステーキの味が口の中に広がると、大変に心地よく、またうれしい気持ちになる。

 

いま、この瞬間に世界に存在しているのは二つだけだ。すなわち、「おれ」と「ステーキ」。あとは何もない。これ以上は何も要らない。

 

ソースは「ガーリッククリームソース」である。「ガーリック」も「クリーム」もメチャメチャにうまいことで知られている食材である。それを組み合わせて、最高の料理であるところの「ステーキ」にかけてしまうのだから、大変に畏れ多い。これだけご飯にかけて食べるだけで十分なのだ。本当は。

 

サイドメニューもうまい

 

 

ステーキだけではなく「ご飯セット」も一緒に注文している。「オマール海老のスープ」がついてきた。

 

 

ついさっきは僕と牛だけの世界で満足していたのだが、オマールエビのスープもうまいな……。とても濃厚で、なんというか「金のかかっている」感じの味がする。だいたい、「オマール海老」自体をいままで食べたことがない。

 

 

付け合わせのフライドポテトについても言及しておきたい。固すぎることもない。柔らかすぎることもない。ちょうどいい、非常に上品なあんばい。いわゆるファーストフードのそれとは一線を画している。

 

ニンジンもなんだかおいしく感じた。さすがにニンジンは普通のニンジンだったような気がするが、ステーキと一緒の皿に乗ることで、一段上に「化けて」いる。

 

 

やがてステーキは最後の一切れになった。食べ進めるにつれて、お皿の上がどんどん寂しくなっていくことに、気づいていなかったわけじゃない。でもこれで本当に終わりなんだね。心の中でそんな言葉をつぶやく。

 

 

ステーキは完全に僕のお腹に納まった。満足です。水をゴクリと飲み干す。端的に言って、最高の気分である。

 

さほど興味のない人でもステーキはうまい

 

 

 

さて、この取材には当メディア編集長の榎並さんも来てくれている。

 

榎並さんはロイヤルホストに特段思い入れがないそうで、入店したときからいたって落ち着いた態度だ(上の写真がほぼ無表情)。僕なんか「ロイヤルホスト」に入ると緊張してしまうというのに…….。

 

 

ステーキが来る前に、榎並さんはテーブルの脇に置いてある花を撮影していた。

 

榎並「へー。きれいな花が置いてあるんですね」

 

斎藤「ロイヤルホストが高級店である証ではないでしょうか?」

 

思わずいらだったような早口の言葉を浴びせてしまった。申し訳ない。榎並さんが僕ほどにロイヤルホストのステーキに興味がないことはわかってはいた。

 

しかし、これからステーキというときに花に目が移るか。榎並さんがステーキに対して失礼な態度をとらないかどうか、若干心配ではある。

 

 

これが榎並さんの注文したステーキ。僕と同じ「アンガスサーロインステーキ」というメニューだ。しかし僕のとはソースが違う。「ドミグラスバターソース」である。

 

榎並さんはこれを食べてどうなるのか……。

 

 

榎並「ああうまいですね」

 

見てくださいこの表情。榎並さん、ステーキを食べたら即落ちだった。心配は杞憂だったと言えよう。

 

榎並さんは一言だけつぶやいて、そこからはほぼ無言になった。僕も無言でステーキを食べていた。それぞれがステーキと共に、それぞれの時間を過ごしている。ステーキの前に、言葉は不要なのだ。  

 

ステーキを食べる高齢者の集団を僕は観た

 

ステーキの余韻に浸りながら、僕は「ロイヤルホストでステーキを食べたくなった」出来事について思い出していた。

 

 

それは2年ほど前のこと。たぶん今日と同じくらいの春先だったと思う。僕が何かの用でロイヤルホストに入ると……

 

 

70歳くらいの高齢者の集団が10人くらいで食事をしていたのだった。

 

 

そこで彼らが食べていたのがステーキだった。それはもう、みんなニコニコしながらうまそうに食べていた。

 

 

僕それをみて思わず喉が鳴ったのだが、ファミレスで2,000~3,000円の贅沢をするって、心理的なハードルが非常に高い。これが居酒屋だったら躊躇なく払える金額なのに。

 

ともあれ僕はカレーか何かを注文して、その場をやり過ごしたのだが……。その日以来、ずっと僕の心の中には「ロイヤルホストのステーキ」がこびりついていたのである。

 

お金を出せばいつでも食べられるし、出そうと思えば出せる金額である。しかし、それがこうも難しい。思うにあの時の高齢者たちはそこそこの「お金持ち」だったに違いない。ロイヤルホストのステーキは富の証だ。

 

 

そんなことを考えなら、ロイヤルホスト大塚店を後にした。たまたまだが、僕が2年前にステーキを食べる高齢者を見たのと、まったく同じ店舗であった。

 

斎藤「食べたいときにいつでもロイヤルホストのステーキを食べられる人間になりたいものですね」   帰り際にこんなことを言ったら

 

榎並「それ、美味しんぼのトンカツのセリフみたいですよね」

 

なんて返ってきた。

 

「いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ。それが、人間えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ」

 

マンガ『美味しんぼ』にこんなセリフがある。榎並さんの言葉はこれを意識したものだ。

 

仮にトンカツが「えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいい」くらいなら、それよりもちょっといいくらいのところに行きたいな……。そんな風に思う。

 

今回の「やりたいこと」にかかった金額

アンガスサーロインステーキ 2530円
2530円