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2020年10月13日
柚子こしょうを自作したい
実家に住んでいた頃、たまに長崎の親戚から自家製の「柚子こしょう」が送られてきた。つぶつぶとした食感が愉しく、苦味に似た青臭さと強烈な辛さがクセになる。この味を知ると、市販品はどうしても物足りなく感じてしまう。
あの荒々しい柚子こしょうを、常にストックしておけないだろうか。
ああ、自分で作ればいいのか。
専門家直伝! おいしい手作り柚子こしょうの作り方
なお、筆者は柚子こしょうが好きなだけで特に知見とかはないため、その道の専門家をアドバイザーに招いた。
つちだあおさん
(柚子こしょう研究家)
全国各地の柚子こしょうを食べ比べたり、様々な柚子こしょうレシピを紹介する「ゆず胡椒専門マガジン」の運営者。多い時で20個ほどの柚子こしょうをストックしているという
あおさんによれば、手作りすれば自分好みの味や食感に調節でき、なおかつ「柚子」と「唐辛子」の香り、辛みを存分に堪能できるという。これは楽しみ。
あおさん:材料は「青柚子」「唐辛子」「塩」のみです。ちなみに、市販の柚子こしょうには「青柚子の皮」と「青唐辛子」が用いられていることが多いですね。
小野:「こしょう」を呼称しつつ、胡椒は入ってないんですね。
あおさん:ですね。柚子こしょうの名前は、九州で唐辛子を「胡椒」と呼ぶことに由来しているそうですよ。(※九州は柚子こしょう発祥の地の一つとされている)
あおさん:青柚子と青唐辛子の旬が重なる時期って7〜9月頃だけなんです。つまり、この2つの素材で作る柚子こしょうは夏だけのお楽しみです。
小野:ってことは、今がベストタイミングですね(8月に取材しました)。柚子はスーパーで売っているやつで大丈夫ですか? 今日のもそうなんですけど。
あおさん:はい。より香りにこだわるなら、直売所やスーパーで探してみるといいのもいいと思います。産地である大分や高知の柚子は特にオススメです。青唐辛子は新鮮で肉厚なものを選んでください。塩は天日干ししたものを使うとマイルドな仕上がりになりますよ。
ポイントは分量と擦りおろしの加減
さっそく作り方を教えてもらおう。
あおさん:柚子の皮と唐辛子の分量は1対1が目安です。今回は皮が18gなので唐辛子も同量の18g。およそ2本分ですね。もちろん、辛いのが好きな方は唐辛子を多くしていただいて問題ありません。
あおさん:つぶつぶとした食感を残したい場合は短めに、滑らかな口当たりがほしい場合は長めに擦るといいですよ。
というわけで完成。見た目と香りは、長崎の親戚柚子こしょうと遜色ないクオリティだ。
なお、あおさんの「ゆず胡椒専門ちゃんねる」でも、動画で詳しい作り方が紹介されている。こちらのチャンネル、ゆず胡椒一本槍で50本くらい動画をアップしていてすごい。
小野:手作りの柚子こしょうって、どれくらい持つんですか?
あおさん:冷凍なら1年は保存できます。適当なサイズのビンがなければ、ジップロックでも大丈夫ですよ。
小野:そんなに持つのか。夏の間に大量に作れば、一年中いつでも堪能できちゃいますね。
あおさん:私はそうしてますね。ちなみに、出来立てはフレッシュな美味しさで、1日置くと味が馴染み、まろやかな味わいになります。
シンプル食材×柚子こしょう
念願の手作り柚子こしょうが完成した。
食べるのがもったいないが、食べないのはもっともったいない。
というわけで、食べる。
柚子こしょうに合いそうな食材を揃えてみた。
「チーズ」「かまぼこ」「きゅうり」「煮卵」「豆腐」「焼いた鶏肉」。 いずれもシンプルな食材なので、柚子こしょうの実力をしっかり感じられると思う。
レンタルスペースの冷蔵庫に、試供品のビールが大量にあったので乾杯。「青空レストラン」みたいになってきた。
まずは鶏肉with柚子こしょう。
小野:これはすごい! 風味が抜群ですね。チューブの柚子こしょうと全然違う。薬味でありながらジューシーな鶏肉に負けてない。むしろ、鶏肉を脇役に押しやるほどの存在感がありますね。
あおさん:やはり、濃厚なチーズとは相性抜群ですね。ピリッとした青唐辛子の辛味に、つぶつぶ食感も相まって最高です。
小野:煮卵やチーズみたいな濃厚な食材だけでなく、さっぱり系の豆腐、きゅうりにも合うからスゴイですよね。万能すぎ……。
あおさん:私はわりと何にでも合わせてみるんですけど、最近のヒットは「アボカド」ですね。しょうゆを付けずに柚子こしょうだけで食べてみてください。香りが良く、後味のキレが最高ですよ。
マグロとアボカドを和えて、柚子こしょうを添えるのもオススメですね。あとは、塩分を控えめにして白米に乗っけるとか。意外とイケます。
小野:白米! その発想はなかったなー。
小野:うどんにも合うなー。具なしの素うどんでも、すごく満足感ありますね。
柚子こしょうの可能性は無限
小野:いやあ、うまかった。残りは家でじっくり堪能します。ところで、あおさんって青柚子×青唐辛子以外の、いろんな柚子こしょうもたくさん作っているんですよね?
あおさん:はい。例えば、赤唐辛子を使った柚子こしょう。青柚子と青唐辛子の柚子こしょうは加熱すると風味が飛んでしまうので炒め物には不向きなんですけど、赤唐辛子で作ると炒めることで逆に柚子の香りと赤唐辛子の辛みが補強されます。炒め物向きの柚子こしょうとしてオススメですよ。
小野:なるほど。唐辛子の品種をアレコレ試してみるのもよさそうですね。メキシコの超激辛系とか、韓国の甘い唐辛子とか、ぜんぜん違う味になりそう。
あおさん:いいですね。あとは、柚子を他の柑橘に変えるのも面白いですよ。柚子こしょうならぬ「レモンこしょう」や、ニューサマーオレンジ(日向夏)を使った「ニューサマーこしょう」なんかも、実際に売られていますから。
小野:ちなみに、特にオススメの組み合わせは何でしょうか?
あおさん:「黄色い柚子の皮」と「青唐辛子」ですね。黄柚子の割合を多くすることで、香りが格段に良くなります。
あおさん:ただ、この2つは時期的に被らない食材なんです。そのため、手作りする場合は黄柚子の皮を薄く切ったものを冷凍しておいて、青唐辛子が流通するまで待たないといけません。
小野:手間だけど特別感ありますね。
あおさん:他には「かぼすこしょう」や「すだちこしょう」、変わり種としては宮崎産の「へべす」という柑橘を使った「へべすこしょう」も作りました。これは意外なヒットでしたよ。
小野:柚子こしょう、思った以上に奥が深いな〜。これはちょっと、沼にはまるかも。ちなみに、市販のものでオススメはありますか?
あおさん:大分の川津食品さんの「粒柚子胡椒」が好きですね。名前の通り、柚子の皮と唐辛子の食感が残っているんですけど、苦味がなく、スッキリした味わいなんです。刺身の薬味として抜群ですよ。
家飲みおつまみにぴったりな、柚子胡椒を使ったピリ辛ディップレシピを3選掲載しています。柚子胡椒を使うことで、味がばっちり決まります。レシピに使用した大分日田・川津食品『粒柚子胡椒』のご紹介もしています。 https://t.co/ZtuM6R4uUG
— あおさん@ゆず胡椒研究家 (@ZhiZu3) July 11, 2020
おまけ:あまった果肉はポン酢に
なお、余った果肉はポン酢にするといいそうですよ。
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この日以来、スーパーで柚子を見かけては買い、ゴリゴリ柚子こしょうを作っている。そして、作ったそばから一瞬で消費している。なんせ、手作り柚子こしょうは旨すぎるのだ。
ちなみに、僕が記事を書かずにだらだらしている間に、季節は10月。もうすぐ黄柚子(完熟柚子)の季節である。そろそろ、あおさん激推しの「黄柚子こしょう」を仕込んでいきたいと思う。
【取材協力】